契約社員として働くことのメリットとデメリットって正しく理解していますか?
実は契約社員は正社員と比較すると明らかに不安定な働き方である以上、メリット・デメリットを正しく理解せずに働き続けると本当に大きな損をする恐れがあります。
そこでこのページでは契約社員としても正社員としても複数の企業で働いた経験がある管理人が実体験を込めて契約社員という働き方のメリットやデメリットについてまとめてみました。
内容に目を通せば正社員ではなく契約社員として働くことのメリット・デメリットに加えてフリーランスや派遣と比較した上での良し悪しまで分かります。
そもそも契約社員とは?
契約社員とは、雇用期間の定めのある労働契約を結んだ非正規社員のことを指します。
法律上において、「契約社員」という名称の雇用区分の記載はありません。法律上では有期契約労働者の一種として扱われます。
法人によって契約社員の呼び名は「契約社員」、「非常勤」、「臨時社員」、「パートナー社員」、「嘱託」などと変わります。
期間の定めがなく企業に雇われている正社員に対して、労働契約期間は原則として最長3年と労働基準法に定められています。
契約期間が満了した時点で、企業との合意のもと、契約を継続する場合も、継続終了する場合もあります。契約更新が行われずに継続終了となった場合には、退職の扱いになります。
契約社員という働き方の7つのメリット
次に契約社員として働く事の7つのメリットについてご紹介します。
与えられた仕事に集中できる
契約社員は職種・仕事内容・勤務地が決まった雇用契約で採用される場合がほとんどで、その契約の範囲外の業務はできません。
つまり正社員と比べ業務の責任が限定的であり、自分の希望した業務内容のみに集中することでき、自分の業務に集中することができます。
自分の選んだ仕事に対してスキル向上が可能です。そのため、目的意識を持った人にはメリットのある雇用体系であります。
原則として社会保険に加入が出来る
契約社員は社会保険への勧誘義務がないと誤解されがちですが、そんなことはありません。
現に厚生労働省の公式サイト内にある人を雇うときのルールというページに記載されている通り、以下の条件を満たせば企業は契約社員であっても各種の保険に加入させる必要があります。
健康保険並びに厚生年金 |
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1日または1週間の労働時間および月の所定労働日数が概ね正社員の4分の3以上であること |
介護保険 |
40歳以上であればすべての人が加入できる |
雇用保険 |
31日以上継続して雇用される見込みである、もしくは週の所定労働時間が20時間以上であること |
労災保険 |
雇用されるすべての労働者が加入 |
つまり、普通にフルタイムで働けば社会保険に加入することが出来てしまうのです。
企業が提供する福利厚生サービスまで使える
福利厚生には法律で規定されている「法定福利厚生」と、企業が独自に行っている「法定外福利厚生」があります。「法定外福利厚生」の最たるものが社員向けに自社サービスや自社商品の割引をする「社割」なんてものがあります。
法定外福利厚生は正社員の特権だと思われていますが、契約社員であっても、会社独自の法定外福利厚生を受けられる場合があります。
もちろん利用できる範囲は限定的なケースもありますが、せっかく使えるならば、使わない手はないでしょう。
勤務場所や勤務時間が大きく変わる事はない
契約社員の労働時間、勤務する場所、仕事内容などの労働条件は契約によって定められます。契約後に勤務場所や勤務時間が大きく変わる事はありませんし、交渉次第では残業しない契約を結ぶこともできますし、転勤もありません。
正社員であれば、急な残業や休日出勤転勤の可能性は常につきまといます。契約社員であれば、そのようなリスクは避けやすいと言えます。
契約が満了すれば簡単に辞められる
契約社員は最初から雇用期間が決まっているため、契約期間が終わればその会社を退職する可能性が高いです。(もちろん、契約が延長されれば今まで通り働けます。)
そのため、「2年後に海外留学をしたいから、それまではお金を貯める」とか「この仕事で経験を積んで、2年経ったらそれを活かして起業する」というような明確な目的がある人には向いています。
また契約社員の場合、時短勤務なども可能なケースが多いです。早めに仕事を終わらせてお子さんをお迎えに行きたい方や、何らかの事情で時短勤務したい方は契約社員がおすすめです。
正社員と比較すると気楽な気持ちで働ける
契約社員ならば、その職場で働きたくないと思ったら契約を更新しなければ簡単に別の職場に移ることができます。
正社員のように常に同じ人と長年働くということもありません。正社員と比べて人間関係に縛られない働き方ができるでしょう。また、社内の飲み会や懇親会といった不要な付き合いも無くすことができます。
副業・兼業を自由に行える
正社員は原則的に副業を許されていませんが、契約社員の場合は多くの企業で副業が認められています。
ただし、あくまでも契約内容を守れる・就業に支障が出ない範囲でなら許されるというケースが多いのでどんな副業でもOKというわけではないのはご理解ください。
それでもたくさん稼ぎたいという方には副業OKというのは、ありがたい規則でしょう。
もちろん契約社員であっても、副業禁止の規定が定められている場合は、副業はできません。副業を始める前に、必ず就業規則の確認をしましょう。
⇒期間契約者にぴったりな副業とは?
逆に契約社員にはどんなデメリットがあるのか?
次に契約社員として働くことのデメリットについてご紹介していきます。
契約期間の終了で失職する可能性がある
契約社員には雇用期間が設けられているので長期雇用は難しいです。
同じ企業で働き続けたくても、契約更新できなければ、失職しますので次の勤務先を探す必要があります。それに派遣社員のように派遣会社が勤務先を探してくれるわけではありません。
更新時期に近づいてきたら、新しい仕事を探しておくなど事前の対策も必要です。
昇進・昇給がほとんど見込めない
契約社員の給与は契約満了時までは雇用契約書に記載されている金額の支給となります。そのため、基本的には仕事で成果をあげたとしても契約期間中の昇給は期待できません。
昇給するとしたら契約更新時ですが、昇給を認めてもらえる保証はありません。あくまで昇給をしてもらえる可能性があるだけであり、最終的には雇用主の判断次第です。
ボーナスや退職金がないことが多い
正社員に比べてボーナスは低い傾向にあります。それに退職時には退職金が出ないことがほどんど。そのため、正社員と比べると所得の面では見劣りします。
出世できる可能性が少ない
役職のポストは正社員が優先される可能性の方が高いです。というも多くの企業は契約社員には契約期間中にまじめに働いてくれることを期待しますが、長く働いてくれることを期待していないためです。
理由はシンプルで契約期間というものがある以上、雇用する側は契約期間の終了と共に雇用契約の打ち切りも常に考えているからですね。
当然、長く働くことを前提にしていない人材には重要なポストは渡しません。そのため、責任のある仕事をしたいのであれば正社員になることをおすすめします。
ローン審査が通りにくい
ローンの審査は収入が安定しない契約社員だと通りにくい傾向があります。理由はローンを組む際に職業の安定性が問われる以上、契約期間の満了により失業する可能性がある契約社員は審査で不利になるからです。
ここまで契約社員の主な5つのデメリットをご紹介しましたが、他のデメリットについては以下のページでまとめております。
⇒もっと詳しく期間雇用者のデメリットについて知る
他の働き方と比較した上での良し悪し
次に他の働き方と比較した上での契約社員の良し悪しについて考えてみます。
フリーター(アルバイト)と比較しての良し悪し
契約社員はアルバイトよりも専門的なスキルを活かすことができます。しかしアルバイトのように、空いた時間を有効活用するような働き方は難しいです。
アルバイトでしたら「週2日」、「1日5時間」、「1カ月の短期間」などといった形で曜日や勤務時間・勤務期間を自分で選ぶことができます。そのため、子育てをしながらや、勉強の片手間でも働きやすいです。
一方、契約社員は労働日数や労働時間は正社員により近く、自由な時間に働くことが難しいと言えます。
派遣社員と比較しての良し悪し
契約社員の方が派遣社員よりも多くの業務を担当できる傾向があります。
契約社員は正社員と同じような仕事を行えますが、派遣社員は補助的な業務が主です。契約社員の方がスキルアップやキャリアアップにつながる重要な業務を経験しやすいでしょう。
しかし契約社員の場合、契約満了後はまた自分で一から職探しをしなければなりません。一方で派遣社員の場合は、所属する派遣会社が自分に合った次の会社を探してくれます。
また、契約社員の場合、給与や待遇面での交渉を自分で行う必要がありますが、派遣会社ならば派遣会社が行なってくれます。
個人事業主(フリーランス)と比較しての良し悪し
契約社員は雇用契約があるため、労働基準法や労働契約法に守られていますが、個人事業主にはそれらの保護がありません。
また、契約社員は社会保険に加入できますが、個人事業主の場合、自ら国民健康保険や国民年金へ加入する必要があります。保険料は全額自己負担となります。
契約社員の場合、決められた業務に専任しやすいですが、個人事業主の場合は、本業以外の業務も自分で行う必要があります。
しかし個人事業主の方が、スキルが高ければ、高単価の案件を選んだり、案件を複数掛け持ちしたりすることができるので、収入が高くなるケースが見られます。
そのため、スキルがある人にとっては個人事業主の方がライフスタイルに合わせた働き方がしやすいでしょう。
正社員と比較しての良し悪し
契約社員の方が正社員よりも入社できる可能性が高まります。理由は正社員と違い、契約社員には契約期間があるので企業としては雇いやすいからです。
加えて勤務日数や時間の調整がしやすく、残業や転勤も無い可能性が高いです。
しかし正社員と比較すると明らかに安定性がない働き方になります。なぜなら、正社員は契約社員と違い、契約期間がないために失業の心配をしなくてよいためです。
それに長期雇用・昇給・ボーナス・出世・責任ある業務の担当・社会的信用などの面に置いても正社員の方が有利です。
契約社員が向いている人と向かない人の特徴
次に契約社員が向いている人と向いていない人の特徴についてそれぞれご紹介していきます。
向いている人の特徴
まずはじめに契約社員が向いている人の特徴を一覧にしてみました。
- 将来のキャリアビジョンがしっかりしている人
- 仕事以外に優先したいことがある
- 特定の職域の仕事を担当したい人
- 人間関係に縛られたくない
- 急に辞める可能性がある人
自分の勤めたい職種が、ある程度のスキルがなければ正社員雇用が難しい場合や起業したい場合には契約社員はぴったりです。必要なスキルを身に付ける手段として、契約社員として働くのも良いでしょう。
それに家庭や趣味、習い事、勉強、資格などのプライベートと仕事の両立をしたい人にもおすすめです。理由は契約社員は正社員と比べると残業が少ないからですね。
また、専門職という形で特定の仕事に集中したい人にも契約社員は理想的です。なぜなら、契約書で定められた担当領域の仕事だけを行えばよいからですね。
それに契約社員は正社員と比べると会社へのコミットが求められない以上、飲み会やプライベートで仕事のメンバーと関わりたくない人にも向いています。
会社へのコミットがそこまで強く求められない理由は契約期間にあります。契約期間がある以上、契約が終了すれば雇用契約が無くなるので簡単に辞められるためです。
向かない人の特徴
次に契約社員としての働き方が向かない人の特徴をご紹介します。
- 安定した収入がほしい
- キャリアアップしたい人
契約終了時に必ず更新される保証はありません。更新できなければ、一時的に収入は無くなります。また、契約社員として働くとなれば、正社員よりも生涯年収が低くなってしまうのが現実もあります。
実際、厚生労働省が発表した令和元年賃金構造基本統計調査の調査結果を見る限り、正社員と契約社員をはじめと非正規雇用者では平均年収に100万円以上の差がみられる事が報告されております。
加えて契約社員は正社員と比べると明らかにキャリアアップの機会が少ないので責任のある仕事を担当してキャリアップしたい人にも不向き。要するに契約社員はキャリアを積みたい人やお金を稼ぎたい人には向かない働き方になるのです。
契約社員が知りたい便利な2つの制度
次に契約社員として働き続けるのであれば絶対に把握しておきたい2つの制度をご紹介します。
同一労働・同一賃金
同一労働同一賃金は、「同じ労働を行っているのであれば、雇用形態が正社員であろうと、契約社員であろうと、アルバイトであろうと、同一の賃金や手当内容だけではなく福利厚生、教育研修等を含めたすべての待遇を均等・均衡にする必要がある」というルールのことです。
この制度によって、労働者は雇用主に対し、正社員との待遇差の内容や理由などについて説明を求めることが可能になります。
ただし、雇用主と労働者が互いの協議の上、契約内容を見直すことができますが、是正されない場合でも現時点での罰則規定はありません。そのため、同一労働・同一賃金という制度が完璧に機能しているわけではないのが現在の実態です。
しかし、過去には労働者が訴訟を起こし、待遇差のうち裁判所が不合理であると判断した部分については、損害賠償請求が認められた例もあります。
⇒同一労働同一賃金のより詳しい説明はこちら
5年後の無期雇用転換
2013年度より、契約の継続を繰り返し、同じ職場に合計5年以上勤続した場合は、「有期雇用」の縛りが無くなる「無期転換ルール」が適用されるようになりました。
このルールは「労働者自らが雇用主へ申請した場合のみ」適用されるため、自動的に転換されるわけではないので注意が必要です。ただし労働者の申請があれば、雇用主が申請を拒否することはできません。
しかし、無期転換されるということは、正社員になれるわけではありません。雇用形態は雇用主の方針によります。
待遇はそのままで契約期間の定めだけがなくなる「無期雇用社員」や、勤務地や業務内容が限定される「限定正社員」となる可能性もあります。より詳しい無期雇用転換のルールが気になりましたら厚生労働省の公式サイトを確認する事をおすすめします。
⇒無期雇用転換の詳細はこちら
契約社員として働く際の7つの注意点
次に契約社員として働く際に絶対に念頭に置いておきたい7つの注意点をご紹介します。
一度契約社員になると正社員になりにくい
契約社員から正社員になれるケースは意外と少ないものです。
そもそも企業が契約社員を雇用する理由のほとんどが「労働力を安く確保したい」点にあります。もちろん企業によっては、専門的な分野を有期で一時期に担当する社員を雇いたい・契約社員として雇用して適正を見たいといった理由もあります。
しかし、財務の健全性がそこまで高くない会社の場合、最初から正社員にするつもりがなく、人件費削減のために契約社員を雇っているところも少なくありません。
社内での正社員登用は狭き門である
正社員登用制度は、契約社員やアルバイト、パートといった非正規雇用から正社員に登用する制度のことです。
しかし実際は、契約社員から正社員登用されるのは正直なところ狭き門です。というのも正社員として登用される基準がかなり高く設定されているケースがほとんどだからです。
求人の際に正社員登用制度があることをアピールする企業は多いですが、実は過去に一度も契約社員から正社員になった人がいないというのもよくあることです。
仮にあったとしても正社員への枠が空いた時だけで数年に1人といった具合です。もちろん定期的に契約社員から正社員への登用試験が行われている企業も多々あります。
契約社員から正社員にステップアップできる人の特徴については以下のページでまとめております。
⇒期間契約者から正社員になれる人とは?
不況になると真っ先に解雇対象になる
不況となり企業が人件費削減に乗り出した時、契約社員は第一に解雇の対象となります。
雇用契約の期間の途中での解雇はよほどのことがない限り違法ですが、契約満了時に企業が契約終了を提示すれば、それに従うほかありません。
5年ルールに期待をしすぎない
5年ルールがあるからと言って、正社員登用や「無期雇用社員」に期待しすぎない方がいいでしょう。先程述べた通り、正社員登用の門は狭く、5年以内に契約終了となるケースがほとんどだからです。
社内では正社員の下のポジションが多い
契約社員であると、どうしても社内の立ち位置が正社員より下と見られることが起きます。
というのも契約社員だと、スキルが低い・仕事への責任が無いと思われがちな上、契約社員よりも企業は正社員を優遇すためです。
つまり、長く働いてもキャリアとして評価されない上に自分よりも10個以上年下から命令されたりこき使われたりすることもあるのです。
退職金や賞与は期待が出来ない
契約社員の場合、退職金や賞与が無い又はあっても正社員ほどの待遇は受けられません。退職金や賞与を当てにしたライフプランは想定しない方が良いでしょう。
契約期間中は止めない方が良い
契約期間内での退職は原則として認められていません。もしも契約期間の途中で退職をしたいのであれば、「やむを得ない事由」が必要となります。
その事由無しに退職をしてしまえば、企業側は損害賠償請求が可能となります。ちなみにやむを得ない事由は下記のような内容です。
- 本人の怪我や病気で就業不能となった場合
- 家族等の介護が必要となった場合
- ハラスメントが横行している場合
- 話し合って円満退職できる場合
上記のようなケースに該当しない場合、基本的には契約期間中に辞める事は出来ませんので注意が必要です。
このページのまとめ
最後に今回ご紹介した内容の中で特に押さえておきたいポイントを一覧にしてみましたので是非ご覧ください。
- 1.有期雇用として雇われている社員を「契約社員」と呼ぶ
- 2.契約社員の働き方として以下のようなメリットがある
- ・2-1.与えられた仕事に集中できる
- ・2-2.原則として社会保険に加入が出来る
- ・2-3.限定的ではあるが、企業の提供する福利厚生サービスまで使える
- ・2-4.勤務地や勤務時間が大きく変わることはない
- ・2-5.契約終了すれば簡単に辞められる
- ・2-6.副業がしやすい
- 3.逆に以下のようなデメリットがある
- ・3-1.契約終了となったら、また自分で1からの職探しとなる
- ・3-2.出世や昇給、ボーナスや退職金は見込めない
- ・3-3.ローン審査が通りにくい
- 4.仕事以外に何か目的がある人やワークライフバランスを重視したい人に向いている
- 5.安定を求める人には向いてはいない
- 6.「同一労働・同一賃金 」や「5年後の無期雇用転換 」制度など契約社員にとって有利な制度が施工されている
- 7.契約社員からの正社員登用は狭き門であるため期待しない方がいい。もし正社員を目指すならば、最初から正社員として応募すべき
ここまでの内容に目を通して契約社員という働き方が合わないと仮に思った場合は正社員を目指すとよいでしょう。正社員を目指す際のコツについては以下のページでまとめているので是非ご覧ください。
逆に契約社員として働く事に大きなメリットを感じるようでしたら雇止めに負けない契約社員を目指すことをおすすめします。雇止めと無縁の契約社員になるコツはスキルアップでして、契約社員が心がけたいスキルアップについては以下のページでまとめております。