無期契約社員のメリット・デメリットと無期転換時の注意点

無期雇用社員の特徴と転換するメリットとデメリット

昨今、よく聞く無期契約社員ですが、一体全体どんな雇用形態なのか気になりますよね。特に、

  • 「無期契約社員になれば正社員になれる?」
  • 「契約社員とどう違う?」

といった点に疑問を持たれる方は多いです。それに無期契約社員と正社員では何が違ったり、無期転換にどんなメリットやデメリットがあるのかについてもいまいちよく分からないと思います。

そこで今回は

  • 意外と知らない無期転換ルールについて
  • 無期雇用に対して多くの人が誤解しているポイント
  • 雇用条件を変える事のメリットとデメリット

といった内容についてお話しします。無期契約社員になるべきかどうか、判断材料の一つとしてお使いください。

そもそも無期契約社員とは?

無期契約社員とは?
無期契約社員とは、雇用期間の定めのない契約社員のことです。多くの場合、契約社員として同一企業で働く期間が5年を超えた場合に、無期契約に切り替わります。

これは、平成24年の8月に改正された労働契約法に基づき、無期転換権が発生することになったからですね。

雇用条件は基本的に契約社員の頃と同一になります。

これにより、契約社員であっても同じ企業で長く勤め続けることが可能になりました。いわゆる正社員や限定正社員とは異なる新しい雇用形態となります。

契約社員と派遣社員の無期転換ルールとは?

無期転換のルール
無期転換ルールというのは契約社員として同じ職場に勤め続ける場合、一定年数経過すると無期契約に転換することを義務付けるルールのことです。

ですが、あまり知られておらず、誤解も多いので、無期転換ルールについて、もう少し詳しくご説明いたします。なお、詳しく説明する際の論拠は厚生労働省の公式サイトの内容を参照しております。

契約社員における無期転換ルール

雇用者が契約社員を有期雇用の契約として雇う事の上限期間は5年と定められています。通算で5年間働くと無期雇用に転換する必要があります。

つまり、契約社員として勤務して5年が経過した時点で無期雇用社員になるのです。詳細については以下の厚生労働省の公式サイトの記述をご参照ください。

無期転換ルールは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、
期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。
契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に、契約期間が3年の場合、1回目の更新後の3年間に無期転換の申込権が発生します。有期契約労働者が使用者(企業)に対して無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立します(使用者は断ることができません)

参照元:無期転換ルールについて

派遣社員における無期転換ルール

無期転換ルールというと、契約社員のイメージが強いですが、実は派遣社員にも無期転換権が発生するのです。

なぜなら、厚生労働省の公式サイトに以下のような記述があるように派遣社員も通算の契約期間が5年以上になれば無期転換への移行を派遣会社にお願いできるためです。

派遣社員として勤務されている方も、有期労働契約を結んでいれば無期転換の対象となります。この場合、派遣会社(派遣元の企業)と締結している労働契約の通算契約期間が5年を超えた場合に、派遣会社に対して無期転換の申込みをすることができます。

無期転換を申し込んだ場合、申込時の有期労働契約が終了する日の翌日から、派遣会社との間で、期間の定めのない労働契約が成立します。

参照元:無期転換ルールの よくある質問(Q&A)

無期契約社員の誤解されやすい3つのポイント

誤解される3つのポイント
無期契約社員はまだまだ知られていない存在でもあり、誤解も多くあります。ここでは無期契約社員の誤解されやすい3つのポイントをご紹介します。

無期契約社員=正社員?

無期契約社員=正社員、と思ったら大きな間違いです。

無期契約社員はあくまで雇用期間が無期限になった契約社員というだけですので、正社員契約とは異なります。加えて無期契約に移行したとしても給与を含めた労働条件が今までのままの可能性も十分にあります。

5年ルール=5年経ったら自動的に無期転換?

無期契約社員を語る上で欠かせない、5年ルールについても大きな誤解があります。

5年ルールとは、5年経ったら自動的に無期契約に転換される、という誤解です。

そもそも、5年ルールといっても実際に適用されるのは5年を超える契約になった場合ですし、自動的に無期転換になるのではなく、必要な手続きがあります。

無期転換ルールはあくまで本人が希望する場合であって、本人が希望しなければ有期契約のまま継続することも可能だからです。

無期転換権を行使するに当たって必要な手続きについて、きちんと調べておきましょう。

必ず無期転換されるとは限らない

無期転換ルールがあるからといって、必ずしも無期転換されるとは限りません。

5年ルールがあることは企業も把握しているわけですが、企業としては必ずしも契約社員を無期契約社員にしたいとは限りません。

無期契約社員になれば、更新がなくなりますから、雇い止めもしづらくなります。

例えば、契約社員は安い給料で使える人材と考え、5年ルールにかかる直前に雇い止めして、新たな契約社員を雇うことを繰り返す企業は珍しくありません。

雇用形態を変更する3つのメリット

メリット
無期契約社員になるかどうかは自分の希望で選べる、とお話ししましたが、実際のところ無期契約社員になるメリットがあるのか、気になりますよね。

ここでは契約社員になるメリットを3つご紹介します。

更新の不安から解放される

契約社員にとって、不安要素の一つが契約更新のタイミングです。契約が更新されるのか否か、毎回緊張することになります。

無期契約社員になれば、契約更新のタイミングがなくなりますから、定期的な不安から解放されるでしょう。ただし、無期契約だからといって、雇い止めの可能性がなくなるわけではありません。

同じ職場で働き続けられる

契約社員の場合、たとえどんなに職場が気に入っていたとしても、ずっと働き続けることは基本的にできません。なぜなら、契約期間があり、契約期間が終われば契約が解除になるためです。

ただし、無期契約社員になれば、契約期間にとらわれなくなるため、同じ職場でずっと働き続けることもできるのです。

そのため、今の条件に満足しており、その職場で長く働き続けたい、と考えている人は、無期契約社員になるのがおすすめです。

無期転換を機に条件改善することもある

契約社員から無期契約に転換する際、通常であれば契約条件は有機契約の時と変わらないことが多いです。

ですが、無期転換を機に労働条件改善につながることもあります。例えば無期転換のタイミングで無期雇用社員になった場合、家賃補助やその他の福利厚生の対象になる事もあるためです。

無期雇用社員に登用に伴っての労働条件がどうなるかについては会社によって異なるために事前に確認しておきましょう。

雇用形態を変更する3つのデメリット

デメリット
無期契約社員を選ぶなら、メリットだけでなく、デメリットにも注意する必要があります。

安易に無期契約社員になることで、「こんなはずじゃなかった……」と、逆に損をすることもあるのです。そこでここでは無期契約社員のデメリットを具体的に3つご紹介します。

無期契約になっても待遇はそのまま

無期契約社員になっても、待遇がよくなるとは限りません。

給与面も、福利厚生も契約社員のまま、ということが多いので、無期契約社員となる場合でも契約書をしっかりと確認しましょう。

加えて無期契約社員になると、有期契約の時とは違い、契約更新のタイミングがなくなるので、辞めやすいタイミングがなくなることになります。それを踏まえて、無期契約社員になるかどうか考えた方がいいでしょう。

収入は上がらないのに責任が重くなる

責任が重くなる
無期契約社員になることによって、収入は上がらないのに責任だけ重くなることもあります。

契約社員の場合は更新のタイミングなどもあり、長期プロジェクトなどを担当させることはあまり無いでしょう。

しかし、無期契約になれば、期間を気にする必要もなくなります。そのため、より大きな案件や重いタスクでも振ることができるのです。

会社側は大きな案件や重いタスクは振るものの、給与は引き上げたくない、というのが雇う側のホンネです。そのため、有期雇用の場合と同じ給与で無期契約社員に転換し、気づくと責任が重くなっている、という状況に置かれるパターンが多くあります。

正社員になりにくくなる

意外かもしれませんが、無期契約社員になることで、正社員になりにくくなる場合があります。

正直な話、正社員並みに責任の重い仕事も引き受けてくれて、正社員より低い待遇でも働いてくれるなら、無期契約社員でいてくれた方が有難い、と考えるのが、雇う側の心理というものです。

そのため、無期契約社員になることで、待遇改善をする必要がない=正社員にする必要がないとみなされてしまい、正社員への道を自然と断たれる無期契約社員は少なくありません。

企業にいいように使われていないかどうか、第三者の客観的な意見を聞いて確認してみることをお勧めします。

雇用条件の変更で損をしないための3つのポイント

無期契約社員になること自体は悪くありませんが、無期転換ルールの落とし穴にはまらないよう、しっかりと対策を立てておきましょう。

ここでは無期契約社員になるにあたって、損をしないために押さえておきたい対策を5つご紹介します。

雇用契約書を隅々まで読み込む

雇用契約書
どこで働くにしても、雇用契約書は隅々までしっかりと読み込みましょう。

実は労働者に不利な条件がしれっと書かれていた、なんてことはよくあります。

そんな時、契約書にサインしてしまっていれば、後から理不尽だと申し出ても「契約書に書いてある」の一点張りで突き放されてしまいます。

そうならないためにも、契約書は隅々までしっかりと読んで、不利な条件がないかを確認しましょう。

無期転換申込書類はきちんと保管

無期転換権を行使する際には、自分から申込等が必要になる、というお話はしました。

無期転換申込を忘れないことはもちろんですが、申込書類をきちんと保管しておくことも重要です。

事前に明示されていた条件と実態が異なる場合でも、その証拠がなければ雇い主側の思う壺です。

もしもの時に確認するため、自分の身を守るためにも、契約書類はきちんと保管しておきましょう。

契約のクーリングの扱いを確認

同一企業で5年を超える契約があれば、無期契約社員になるための申請ができる、というお話はしましたが、同一企業でも連続して5年勤めているとは限りません。そのため、無期契約社員を検討している場合は、契約のクーリングの扱いも確認しておきましょう。

そもそもクーリングとは?

クーリングとは、契約社員として契約がない期間のことです。

例えば、ある企業で3年契約社員として働き、その次に別の企業で半年間働いており、再び元いた企業で契約社員として働くとします。この場合、同一企業における契約の空白期間が6ヶ月できますよね。

この期間をクーリング、と呼びます。

クーリング期間の目安について

一般的には6ヶ月以上のクーリング期間がある場合、以前働いていた3年は計算上リセットされます。そしてまた1から数えて5年を超える契約になって初めて無期転換権が発生するのです。

逆に、クーリング期間が6ヶ月未満の場合は、以前働いていた期間とこれから働く期間が通算5年を超えれば、無期転換権が発生します。

同一企業での契約に空白期間がある場合、無期契約社員の申し込みができる時期についても注意しておきましょう。

無期転換を利用する際の注意点

注意点
改正労働法に伴い、無期契約社員になることを目指して一生懸命働いている契約社員の方も多いです。

ですが、あなたが無期転換を狙う際に気を付けるべきポイントはいくつもあります。あなたが無期転換を狙う際に気を配るべき代表的なポイントについてこれからご紹介します。

突然の雇い止めに備える

無期転換を狙っているあなたが絶対に気を付けたいのが雇用主による雇い止めです。

実はできる限り人件費を抑えたい企業ほど、わざと5年以内で契約更新をやめ、無期転換権を発生させないようにします。

万が一、企業から雇い止めに遭った時には新たな契約先を探さなければいけません。すぐに次の仕事が見つからなければ、無収入の期間も発生してしまいます。

そうなった時のために、無職期間が発生した時用の貯金をしておきたいですね。

それに転職する際に役立つスキルを身につけていたり、副業をはじめて会社外の収入源を持っておいて万が一の失職対策をしていると安心できます。

突然の雇い止めに遭ったとしても、備えをしていれば、食いっぱぐれることはないと気持ちにゆとりができます。

雇い止めされた時になって焦らないために、今のうちから雇い止めに対する備えをしておきましょう。

辞職の自由があるか確認

無期契約社員として契約する際に必ず確認すべきポイントが、辞職の自由があるか、ということです。

契約社員の時と違い、更新のタイミングがなくなるため、簡単には辞められなくなることも多いのです。

企業によって、無期契約社員になってからすぐには辞められないという文言が書かれていることもあります。

無期契約社員にも辞職の自由があるかどうか、しっかりと確認しておきましょう。

本当に無期契約社員になるべきか考えよう

無期契約社員になるべきか否か
無期契約社員になることは、将来を見据えて考える必要のある大きな決断です。長く働き続けられる安心感が得られる代わりに、簡単に辞められなくなるともいえます。

また、無期契約社員になるよりも、他の企業や業種で正社員を目指す方が良いという考え方もあります。

無期契約社員になるにあたって、自分は本当になるべきか、メリットとデメリットを踏まえて検討しましょう。また、申込のタイミングを逃さないよう気をつけてくださいね。

最後に非正規雇用から抜け出す方法についてまとめているページをご紹介しますので是非ご覧ください。

臨時雇用者から抜け出す方法とは?

手に職をつけるぜナビ~おすすめの仕事と持つと強い資格のまとめ